トム・レイノルズとスピード・プロジェクト | 砂漠で飲むグッドブリュー

ウルトラランナーであり、コミュニティランのリーダーでもあるトム・レイノルズと私たちの最新のコラボレーションは、かつてないほど斬新なものでした。マンチェスターにあるオールプレス・ラン・クラブのリーダーのトムは、マンチェスターとシェフィールドを結ぶ76kmのウルトラ・ファンラン「ピーク・ディバイド」を立ち上げます。しかし、それよりさらに大きな「アタカマ」というスピード・プロジェクトで、彼はかつてないほど大きな挑戦をすることになったのです。

11月後半、アタカマ砂漠で1〜2キロのグッドブリューが、これまでまったく面識のなかった人たち同士を赤の他人から友人に変えるきっかけをつくることになります。そのときトムは、根っからのランナーたちが500キロのコースを走るために参加する「スピード・プロジェクト」という名の非公式のランニングレースのためにチリ滞在していました。

トムを含めたランニングチームのレースの中心にあったのがコーヒーです。トムは見ず知らずの5人のランナーと一緒にこのレースを走り抜き、スピード・プロジェクトを終える頃には彼らは生涯の友となっていました。これはある意味、シンプルな一杯のコーヒーの力によるものでもあったのです。

トムから届いた砂漠でのレポートは以下の通り。

砂漠で飲む特別なコーヒー

地球上で最も乾燥した場所 — 砂漠を横断する500キロもの非公式のランニングレース。その真夜中に飲むコーヒーは格別です。ルート、観客、補給所、インフラのすべてがないレースであるスピード・プロジェクト。2023年11月に開催されたアタカマ・レースは、オーガナイザーであるニルス・アレンドがロサンゼルスからラスベガスまで続くオリジナルレース(LALV)に対して抱いた不満から生まれたもので、今年で10周年を迎えました。

アレンドに言わせれば、LALVはまるで猫(それも飼い猫)でしょう。一方でアタカマ・レースは、まるで虎のような存在であると言えます。

スタート地点(イキケの太平洋岸)とゴール地点(500キロ離れたサンペドロ・デ・アタカマ)が指定されている以外には、これといった規則は何もありません。ただし、私を含むチーム・アド・アストラには1つだけ妥協できないポイントがありました。それはつまり、レースの最中に譲れないくらいおいしいコーヒーを飲むことです。

プレランの朝食後、私とチームは広大な鉱山地帯を通る500キロのルートに挑み始めました。途中の補給地点は一箇所だということを考慮し、砂漠で2日間過ごすための食料と水をすべて持って。

にもかかわらず、私たちはエアロプレスとグラインダーのセットアップと数キロのグッドブリューを淹れるための余裕と時間だけは妥協できませんでした。

スピード・プロジェクトのレースは今後もまだまだ続いていくはずです。今回も世界中から集まった6人1組の15チームが、これまでになく過酷なレースを40時間以上かけて完走しました。チーム・アド・アストラは15チーム中9位。コーヒーを飲みながら走ったために、おそらくあちこちで数秒のロスがあったせいでしょう。それでも、チーム・スピリットという点において、私とチームメイトにとってこのレースはかけがいのない経験となりました。

朝のセレモニー

夜明けにコーヒーを淹れる時間は心がやすらぐひとときとなります。砂漠が一面に広がる中、朝日を浴びながらコーヒーを淹れると、何か神秘的なものさえ感じる気がするのです。スピード・プロジェクトではペース配分が重視されるだけに、数分かけてゆっくりとした時間を過ごすなんて、他の参加者からは信じられない行為だと思われるかもしれません。北米から参加していた5人のランニング・チームメイトの中に混ざっているよそ者のイギリス人だった私にとって、これは彼らと絆を深める完璧な方法でもありました。そして、初対面の仲間のためにコーヒーをさっと一杯淹れることで、「スピード・プロジェクト」という名前の通り、スピーディーに彼らとつながることができたのです。

このレースでは、基本的に丸二日間連続で徹夜をしながら走り続けることが要求されます。10〜15分おきにランナーが大体2〜3キロの距離を走り切り、チームメイトにバトンタッチしてさらに砂漠の太陽や星空へと向かって走っていきます。2日目の明け方 — 朝の光が降り注ぐ中、チームメイトであるデナリ・ティートジェンが次の3キロの距離を走る準備をしていたとき、カメラマンで同じくチームメイトのダン・キングが、彼女にグッドブリューが半分入ったカップを渡すというちょっと変わったバトンタッチをしたところ、彼女はパッと顔を上げて目を輝かせました。

それをみていた私は、悲観していた彼女がたちまち元気を取り戻したかのように見えたのです。カフェインのやりとりをきっかけに、それまで薄暗く感じた夜明け前の光の中で会話が始まりました。

「ああ、ありがとう」
「気にしないで」
「よく眠れた?」
「うーん、まあまあかな、君は?」
「あんまりかな。走りに行く?」
「うん、そうだね…」

道路脇で眠ってから10分後、デナリはサンペドロ・デ・アタカマのゴール地点に向かって走り出しました。その5分後、私はあの狂ったように明るい早朝の砂漠の中でコーヒーを飲み、友人のティリーと一緒に走る準備をしました。ダンや他の仲間がアタカマで何度も何度もやってくれたように、グッドブリューが入ったカップをシェアしながら——。

コーヒーを飲んでいる間、そして飲んだ後も、私はチームメイトと語り合いました。レースのこと、日々の生活のこと、現実の世界に戻ってからの朝の習慣。そうして朝日に向かって走り出し、砂漠を横断するという驚異的なレースを続けていったのです。

レースが終わったあとは心臓も脚もガタガタ。それでもグッドブリューを飲み、心を満たし、人とつながったこの500キロのレースは、私にとってかけがえのない宝物です。